労働条件通知書、賃金一部控除の協定、36協定他

人事労務の仕事

日々ご苦労されている中小企業の人事労務担当者さまへ

労働基準監督署の調査対応の経験談を一般化した表現に変えてお伝えします。

参考にしていただけることがあれば幸いです。

労働時間・労務管理に係る調査

2006年頃のある日、労働基準監督署から1通の書面が郵送で届きました。

内容は「労働時間・労務管理に係る調査について」というものです。

以前に対応したB事業場の労基署調査から約3年後、今回は別のA事業場の調査に関する通知書面でした。

文面上は、「指定の日時にご来署いただきたくお願い申し上げます」ときわめて丁寧でした。しかし、できれば避けたいのが本音の労基署の調査です。

役割分担上、調査について私が対応することになりました。

「事前に通知があっただけまだいいか・・・」と気を取り直し、持参するべき必要な書類の準備にとりかかりました。

事前準備

通知書面に記載された持参するものは、以下のものでした。

1.雇入れ時の労働条件通知書

2.就業規則(賃金規定等含む)

3.賃金台帳(直近3か月分)

4.タイムカード・出勤簿等労働時間の記録(直近3か月分)

5.各種協定届(時間外労働・休日労働に関する協定届など)

6.年次有給休暇管理簿

7.定期健康診断個人票

8.来署される方の印鑑

9.本状

以上の該当するものまたは、該当すると思われるものを準備しました。

都合が悪い場合には日時を変更いたしますとのことでしたが、指定の日時にこちらから労基署に出向きました。

是正勧告

労基署の1室で、担当の労働基準監督官による調査が約1時間半ほどで終わりました。

結果は違反事項が認められたので、「是正勧告書」に基づいて是正し、期日までに報告するようにとのことでした。

是正勧告書の内容は、以下の事項についての是正でした。

1.労基法15条 労働契約の締結に際し、労働者に対し、契約期間、労働時間、賃金等の法定事項について、書面を交付する等により明示していないこと。

2.労基法24条 書面による労使協定がないにもかかわらず、図書費等を賃金から控除して支払っていること。

3.労基法32条 事務の労働者について、時間外労働に関する協定届を届け出ていないにもかかわらず、1週間について40時間、1日について8時間を超えて労働させていること。

4.労基法37条 工場労働者の時間外労働に対し、2割5分以上の率で計算した割増賃金を支払っていないこと。(不足額については〇月〇日に遡及して支払うこと)

5.労基法89条 給与規定を変更しているにもかかわらず、就業規則を変更し、〇〇労働基準監督署長に届け出ていないこと。

調査終了後会社に戻り、上記の事項を是正すべく対応していくことになりました。

是正報告

是正勧告に対する各々の項目について指定の期日までに是正を行い、「是正報告書」を作成して、労基署に出向き担当の監督官に報告を行いました。

以下、監督官に提出した是正報告書の是正内容です。

1.労基法15条について 今後、労働契約の締結に際し、労働者に対し、契約期間、労働時間、賃金等の法定事項について、労働条件通知書(ひな型様式)により明示します。

2.労基法24条について 賃金の一部控除に関し、書面による労使協定を締結しました。

3.労基法32条について 事務の労働者について、時間外労働に関する協定届を届け出ました。

4.労基法37条について 工場労働者の時間外労働に対し、2割5分以上の率で計算した未払いの割増賃金について、その不足額を別紙のとおり、〇月〇日の給与支払日に支払います。

5.労基法89条について 給与規定を変更したので、就業規則の変更届を〇〇労働基準監督署長に届け出ました。

【各々の項目について添付した書類】

1.労働条件通知書(ひな型様式)

2.賃金の一部控除に関する協定書(新たに締結した書面)

3.時間外・休日労働に関する協定届(新たに締結した書面)

4.割増賃金の不足額計算書

5.就業規則の変更届と変更した給与規定の書面

以上の協定届や是正報告のため3回ほど労基署に出向き、一連の是正報告を終了しました。

おわりに

私のように中小企業で他の業務をやりながら、人事労務を担当されている方もいらっしゃると思います。

もし、労基署の調査が入り是正勧告を受けた場合は、その対応で苦労されることも多いかと思います。

しかし、合法的な形に改善できる機会を得られたと捉えることもできると思います。

後ろ向きに考えるのではなく、よい方向へ向かわせるという気持ちで取り組むことが大事です。

因みにこの当時私は、社会保険労務士の資格取得を目指して勉強を開始したころでした。

労働関係法令のテキストに出てくる言葉(用語)は知っていましたが、実際の仕事に関わりながら労基署の監督官とやり取りできたことは、机上の勉強では得られない貴重な経験となりました。

まあ当時はそんな余裕はなかったわけですけれども・・・。

「人生、無駄なことはひとつもない」と自分を励まし、何ごとも前向きにとらえていけたらいいなと思った次第です。

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