私が企業の人事部時代に経験した、労働基準監督署の調査対応のことについて、一般化した表現に変えてお伝えします。
だいぶ前のことですが、参考にしていただけることもあるかと思います。
初めての労基署調査対応
時はさかのぼって平成時代の中頃のことでした。
事前に通知のあった日時に労働基準監督署の監督官がやってきました。
私が、人材の募集採用業務を前任者から引き継いで数年経った頃のことです。
他業務との兼務で専任ではありませんでしたが、人事労務関係ということで、私が今回の調査対象となったB事業場に出向いて対応することになった次第です。
もちろん私自身は、労働基準監督署の調査対応をするのは初めてでした。
本音をいえば、労基署の調査なんて受けたくありませんよね。なんだかコワいですし・・・。
事前準備
労基署から事前に連絡のあった「準備していただく書類」を総務課から取り寄せてありました。
その書類とは以下のものでした。
1.直近3か月間の賃金台帳とタイムカード
2.就業規則(賃金規定、退職金規定等別規定を含む)
3.時間外・休日労働に関する協定届
4.一年単位の変形労働時間制に関する協定届
5.雇入通知書(雇用契約書)
6.個人別有給休暇取得簿
7.定期健康診断結果の個人票(過去1年分)
8.労働者50名以上の事業場 a.定期健康診断結果報告書(過去1年分)b.総括安全衛生管理者・安全管理者・衛生管理者・産業医選任報告書(現在選任されている者)
9.有機溶剤・特定化学物質・粉じん等の作業を行う事業場特殊健康診断結果報告書(過去1年分)
以上の書類で、無い場合、該当しない場合は結構ですということでした。
さあ緊張しつつ、調査開始となりました。
是正勧告
準備した書類の内容について、労働基準監督官からの質問に応答しつつ、個別具体的な指摘を受けるという流れで調査が進みました。
書類内容の確認と併せて事業場内の現場確認がありました。全体の調査時間は2時間ほどだったと思います。
そして、結果はどうだったかといいますと・・・。
調査終了にあたり、監督官がなにやら書類をこしらえて出してきました。
その書類のタイトルは「是正勧告書」でした。
私にとって初めて目にする書類でした。(何回も見たくはありませんが・・・)
是正勧告ということは、なにかしらの違反事項があるということです。
その書面には、「違反事項については、それぞれ指定の期日までに是正の上、遅滞なく報告するよう勧告します。」という文言が記載されており、是正期日が決められました。
以下、是正を求められた指摘事項の内容です。
1.労働基準法第89条 常時10名以上の労働者を使用しているが、○○労働基準監督署長あて就業規則を届け出ていないこと。
2.労働安全衛生法第66条 深夜労働を行わせている労働者について、6か月以内ごとに1回一般健康診断を実施していないこと(1年に1回しか健康診断を実施していないこと)。
3.常時50名以上の労働者を使用しているが、定期健康診断結果報告書を○○労働基準監督署長あて届け出ていないこと。
監督官から上記のことを是正して是正報告書を作成し、期日までに報告するように求められました。
参考までに「是正勧告書」には、注意事項として次のような文言の記載がありました。
労働安全衛生法等関係法令違反を原因として、労働災害を発生させた場合には、是正期日内であっても、送検手続きをとることがあり、また、労働者災害補償保険法に基づき特別に費用を徴収することがあります。
労働基準監督官は通常の場合、行政上の権限で労働基準法違反の有無を調査します。
そして、悪質な場合には、刑事訴訟法に規定する司法警察官としての職務を行えるのです。つまり労働基準監督官は、逮捕権を持っているということです。
だから一般的に労働基準監督署はコワいというイメージがあるのだと思います。
私もそういうイメージがありました。今でもそうですね。
是正報告
当事業場は、新たに開設されてから数年だったこともあり、法律に合った対応ができていなかったということもありました。しかし、違反事項をそのままにしておくわけにはいきません。
1の就業規則の届け出がされていなかったことについては、就業規則自体がなかったわけではありませんでしたので、届け出をすることにしました。
2の健康診断の実施については今後、該当の労働者について年2回実施をするように改めました。
3の定期健康診断結果報告書については今後、労働基準監督署へ届け出るように改めました。
以上、「是正勧告書」の指摘事項については、期日までに是正し、「是正完了報告書」を提出して終了となりました。
おわりに
労働基準監督署の調査で是正勧告が出された場合の対応は、まず現在の違法状態を改善することです。そして、将来に向けて是正を行っていくことになります。
この労働基準監督署の調査への対応は、後の私自身の社会保険労務士の資格を目指すひとつのキッカケとなりました。
以上、最後までお読みいただきありがとうございました。
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